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歌詞投稿コミュニティ「プチリリ」

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アーティスト:平魚泳  アルバム:暮らし、暮れゆく暮らし  作詞:平魚泳  作曲:平魚泳  発売年:2024-01-14 

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鬼だ。鬼が歩いている。 仕事帰り、川沿いの国道を緩い渋滞に合わせながら ゆっくり運転していると、 川の向こう側の山々の稜線に夕日が落ちる。 そこに黒いシルエットとなって、何か巨大なものが動 いているのが見えた。 毎日、会社の車で職場に帰る道である。 遠くに見える美しい山々と空と夕焼けのコントラスト に、 ふと運転への注意が外れて、見入ってしまったそのと き、 私はそれに気づいたのだった。 それを鬼だと決めつけるには、何の根拠も証拠もない のだが、 べつに誰に話すわけでもない。 あの山の稜線を、黒く、のっしのっしと歩く巨大な生 き物は 「鬼」である、と私は感じとっていた。 毎日同じ時間、同じように仕事をこなし、 夕方になると、その遠くに見える「鬼」に気づきなが ら、 いつも車を運転していた。 職場でも、家族や友人達との間でも、テレビのニュー スですら、 このことに全く触れられることがなかった。 でも、まぁ、そもそも私の方からこのことについて 誰かに話すということもなかったわけだから ・・・まぁ、そういうことか。 1週間ほど経ったある日、 鬼がずいぶんと近くまで来ているということに気がづ いた。 もう山の稜線のシルエットではなく、はっきりと見え る大きさで (と言っても巨大な生き物なので、まだ遠くではある のだが)、 山を降りて、向こう岸の山の手の家々を壊し、暴れ、 鬼の赤い肌のように、 真っ赤な炎を上げて、集落が燃えているのが見える。 そういえば、ここ数日、職場に来る人の顔ぶれが変 わってきているような気がする。 いつも昼ごはんを食べる定食屋がここしばらく休みな のも、 あの集落から働きに来ている人のお店だったのかもし れない。 それなのにまだ、テレビでも、職場でも、家族や友人 達との間でも、 このことが話題にのぼらない。 不思議な毎日だった。 数日経ったある日、川の向こうで、鬼が私を見て立っ


投稿者: BIG UP!Official
プチリリ再生回数:0





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